アメリカのデザイナーフーズ計画が認めたニンニクのガン予防への有効性

黒ニンニクの前に、まずは生のニンニクとガン予防の関係性について知っておいたほうがいいでしょう。

ニンニクとガン予防の関係性を知るうえでは、1990年代にアメリカ政府が推進した国家プロジェクト「デザイナーフーズ計画」を知る必要があります。

今回は、デザイナーフーズ計画とニンニク、そしてガン予防について説明していきます。

アメリカのデザイナーフーズ計画とは

日本よりもひと足早くガン死亡者の増加が深刻化していたアメリカでは、日本よりも格段に食べ物と健康の研究が進んでいました。

古くは1930年代から「脂肪分の摂取」と「がんの発生」の関連性に関する研究が進められ、1970年代には脂肪分の摂取量が癌の発生に大きく関与していることを発表した研究が相次いでいました。

1977年に発表された「Dietary Goals for the United States」(通称マクガバン・レポート)がさらに機運を高め、それまでの膨大な疫学研究データを背景に、がんの発症の予防には食生活、特に野菜や果物などの摂取が重要な役割を果たしていると考えられ、その流れから植物性食品成分(フィトケミカル)が注目されてきたのです。

ちなみに、アメリカが積み重ねてきた疫学研究の一例として、ニンニクを日常的に使用し、摂取量の多い地域、例えば、イタリアや中国のある地方では胃がんの発生が非常に低いというデータがあります。
また、ニンジンやセロリ、パースニップなどのセリ科の野菜の摂取は、大腸がんや食道がん、肝臓がんなどの消化器ガンとともに、前立腺がんや皮膚がんなどの多種多様ながんの発生に対して抑制効果があるという研究結果が数多く出されています。

そして、植物性食品成分(フィトケミカル)による癌予防策として、1990年にアメリカ国立がん研究所(NCI)を中心に2000万ドルの予算規模でスタートしたのが「デザイナーフーズ計画(Designer Foods Project)」なのです。

デザイナーフーズ計画でガンへの予防効果があるとされた野菜

そこで、公開された野菜が以下の図(英語)と表で示すものです。

にんにく
キャベツ、甘草(リコリス)、大豆、ショウガ、セリ科の植物(ニンジン、セロリ、パースニップ)
タマネギ、お茶、ウコン(ターメリック)、玄米、全粒小麦、亜麻、柑橘類果実(オレンジ、レモン、グレープフルーツ)、ナス科の植物(トマト、ナス、ピーマン)、アブラナ科の植物(ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ)
マスクメロン、バジル、タラゴン、カラスムギ、ハッカ、オレガノ、キュウリ、タイム、アサツキ、ローズマリー、セージ、ジャガイモ、大麦、ベリー

上の図のピラミッドで示される図は、上にいくほど”重要度が増します”。

すなわち127種類の野菜のうち、にんにくが「ガンになる危険性を少なくする効果がある最も重要な食物」であると発表されたのです。

なお、ここでいう重要度が高いとは、ガンの予防効果が一番強いというわけではなく、
ガンの予防効果が一定以上ある確率が高い(信頼できる)というニュアンスですので、ご注意ください。

それでもなお、ニンニクのガン予防の効果が期待できることに変わりありません。

デザイナーフーズ計画のその後

余談ではありますが、1990年にスタートしたデザイナーフーズ計画ですが、1993年をもって終了となっています。
しかしそれは効果がなかったからではありません!

この計画の目的は、国民の食生活を改善することで、ガン患者の数を減らすこと、ガンで亡くなる方の数を減らすことにあります。

アメリカ国民の野菜の摂取量の増加

デザイナーフーズ計画が開始となった翌年の1991年、NCI(米国国立がん研究所)はPBH(農産物健康推進基金)と協力して5-A-DAY運動を展開、1日に5皿(350g)の野菜と200gの果物を食べるように指導します。
その結果、アメリカ国民の野菜と果物の摂取量がしだいに増加していくのです。

1990年の時点では1年間の1人あたりの野菜摂取量が110kgであったところ、1995年に122kg、2000年には130kgを超え、その後も120kg~130kg前後の消費量を保っており、逆に野菜摂取賞が落ちている日本人を遥かに上回るようになったのです。(参照:FAOSTAT「Food Balance Sheets」)

この成功要因としては、物流の改善やカット野菜の鮮度保持技術の改善などもありますが、政府が指導しただけにとどまらず、青果業界、食品業界が情報発信や啓発活動をくり広げ、全米1800組織以上、スーパーマーケット35,000店以上が参画する国民運動にまで成長したことに求められるでしょう。

アメリカでのがん患者数の変化

まずは、がん患者数ですが、年齢による修正を加えた数値がSEER(Surveillance Epidemiology and End Results)から発表されているのでそれを見ると
1992年には10万人あたり503.4人だったところから着実に減少し、1995年には471.5人、2005年に461.3人、2010年に452.0人、2015年に417.9人となっており、23年間で10万人あたり85.5人減っています。

がん患者数が減った原因としては、明確な答えはわからないものの、喫煙率が下がったことが一番寄与しているだろうと言われています。
しかし、ニンニクを含む野菜の摂取量が増えたことも一因なのかもしれません。

ちなみに日本はというと、全国のデータでは年齢調整された罹患数(患者数)が見当たらなかったので、「国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」」の中の山形、福井、長崎の3県のデータがまとめられているものを見ると、
1997年が10万人あたり308.3人、2005年324.0人、2012年に356.5人と、なんとアメリカとは逆に15年間で10万人あたり48.2人増える結果となっているのです。

高齢になるとガンにかかる確率が高まるため、現在高齢化街道をひた走っている日本のがん患者数が増えるのは当然のことなのですが、上の数値は「年齢調整された罹患数」なので、高齢化だけが原因ではなさそうです。
そこで言われているのが、日本人の食生活の変化にともなう野菜摂取量の減少なのです。
1990年に1人あたりの野菜摂取量が107kgであったのに対し、1995年に105kg、2000年に101kg、2005年に96kg、2010年には88kgまで減少し、その後も90kg前後の水準のままなのです。
(参照:農林水産省「食料需給表」)

アメリカでのガン死亡数の変化

がん死亡数については、アメリカのデータは、CDC(疾病対策予防センター)の「全米保健医療統計センター」の数値を見ると
1992年には10万人あたり213.5人だったところから、こちらも着実に減少し、1995年には209.9人、2005年に185.2人、2010年に171.7人、2015年に158.7人と、23年間で10万人あたり54.8人減っています。

同じく日本の数字では、国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」を見ると、
1992年が10万人あたり153.2人、1995年157.8人、2005年140.2人、2010年130.9人、2015年121.3人と、23年間で10万人あたり31.9人減る結果となっています。

死亡数の減少の要因については、アメリカでは患者数が減ったのと同じく喫煙者数の減少が一番大きいとされています。
また、日米ともに人間ドック等で早期にガンを発見しようという機運が国全体で高まったことがガン死亡数を押し下げる要因となっています。

デザイナーフーズ計画が認めたニンニクのガン予防効果のまとめ

アメリカの長年にわたる疫学研究のデータに基づき、1990年代にガン予防にとっての重要性から大きな注目を集めたのがニンニクです。

アメリカは野菜全体の国民の摂取量を増やすべく努力し、90年代以降、年齢調整を踏まえるとガンの罹患数、死亡数ともに減っています。

一方、日本は、年齢調整されたガン死亡数は減っているものの、罹患数は減らすことができていません。

アメリカと対照的に野菜摂取量も減っている日本。ニンニクはもちろんですが、野菜摂取量を増やすことがガン患者数を減らす一手となるかもしれません。